落語家の階級

落語に興味を持ち始めると、普段あまり接することが少ない世界だけに、もっといろいろと知りたくなるもの。なかでも、「落語家」っていったいどんな仕事をしてるの?そもそも落語家って、いったいどうやってなるの?など、落語家に関する疑問はたくさんあるのではないでしょうか。
落語家(東京)には、「真打ち」「二ツ目」「前座」「前座見習い」という階級があります。ここでは、「落語家になるまで」と「落語家になってから」の道のりをご紹介します。

落語家の階級

落語家になるまで

どんな大真打ちや名人でも、生まれた時から落語家という人はいません。落語家になるには、まず第一に真打ちの弟子にならなくてはなりません。一つの方法として、寄席や落語会に足しげく通って、入門したい師匠をさがします。(なかには、知人などのツテで師匠を紹介してもらえる場合もあります。)弟子になったら、その師匠とは一生師弟関係になるのですから、慎重に決めましょう。よほどのことがない限り、師匠を替えることはできません。心に決めた師匠がいたならば、今度はなんとかしてコンタクトを取ることです。一番確率が高いのは、出演している寄席の楽屋口で待ち受けることでしょう。そして、落語への情熱や師匠に決めた動機など、自分の熱い思いを伝えます。たいがい断られますが、それでもめげずに何度もトライしましょう。その結果、弟子入りが叶う場合とそれでも断られる場合があります。弟子入りが叶うと、そこから前座見習いとなります。

前座見習い

師匠が入門を許可すると、前座見習いとなります。まだこの時点では、落語家になると所属する「協会」に登録されないので、楽屋には入りません。前座見習いの仕事は、師匠(あるいは兄弟子)に付いて仕事先へのかばん持ち、師匠の家の雑用、そして前座(楽屋入り)になるための修業(落語の稽古、着物の着方やたたみ方、鳴り物の稽古など)です。これらがある程度できるようになると、師匠から許可が出て晴れて楽屋入り、前座となります。この期間は師匠によってまちまちです。

前座

前座とは、寄席の番組(プログラム)で一番前に高座へ座るので『前座』といわれます。前座の仕事は、前座見習いの仕事のうえに、今度は楽屋での仕事があります。では、前座の一日を紹介しましょう。

朝、師匠の家では・・・

師匠の家に行き雑用をします。食事をしてから寄席に行きます。

寄席に着くと・・・

楽屋の準備をします。楽屋の掃除をして、お湯を沸かし、その日出演する芸人のメクリ(高座で名前が書いてあるもの)を揃え、着物に着替えます。開演の30分前までにその作業をすべて終わらせます。

開演30分前

いよいよ一番太鼓を打ちます。「ドンドンドンと来い」と聞こえるように、また、これにあわせてお客様が来場されます。できるだけ元気に叩きます。その後、先輩の芸人さんたちが楽屋入りしてくるので、お世話をします。

太鼓
いよいよ開演5分前!

開演の5分前には二番太鼓を入れます。これは、「まもなく開演ですよ」という合図ですからしっかり叩きます。

開演!!

開口一番が前座の出演する時間です。寄席によって違いますが、大体10分程度の時間、落語をします。

番組中も大忙し

その後は、高座返しをしたり、鳴り物(出囃子や地囃子や踊りの時の太鼓)も前座の仕事です。楽屋の中では、先輩方にお茶を出したり、師匠方の着替えのお手伝い、ネタ帳をつけたり、とにかく失礼の無いように気を遣いながら働きます。

メクリ
無事、終了

番組の最後の師匠(トリといいます)が高座へ上がると、楽屋の後片付けをして、落語が終わると追い出し太鼓を入れます。寄席での仕事はここまでです。

他にも・・・

空いている時間に、師匠方に噺の稽古をつけてもらうこともあります。人によっては他のお稽古事、地域寄席等のお手伝いと、かなり忙しく過ごします。

前座は毎日寄席に通うので、お休みは余一(大の月の31日)のみです。毎日毎日この繰り返しをして、約4年で二ツ目になります。

二ツ目

二ツ目とは、寄席の番組(プログラム)で二番目に高座へ上がるので『二ツ目』と呼ばれます。二ツ目になると、師匠の家や楽屋での雑用がなくなります。着物も、今までは着流しだったのが紋付を着て、羽織も着られて、袴を着けることもできるようになります。見た目は一人前の落語家です。ただし、毎日楽屋へ来なくてもいいようになり、高座の数も減ります。そこで自分の責任で高座(仕事)を探さなくてはなりません。そのために、噺の稽古(噺の数や技術)にも気を入れないと、たちまちライバルとの差が開いてしまいます。時間が急にできるので、人によっては、だらけてしまうのもこの地位だと思われます。二ツ目を約10年勤めると、いよいよ真打ちになります。

二ツ目勉強会

二ツ目勉強会

真打ち

落語家になって目指すのは、やはり真打ちです。真打ちとは、寄席の番組(プログラム)で一番最後に出る資格をもつ落語家です。また、弟子を取ることもできます。真打ちの語源は諸説ありますが、昔の寄席の高座には、照明用に蝋燭が立っていて、寄席が終わると最後の出演者が蝋燭の芯を打つ(切って消すこと)ことをしたために「芯打ち」といわれ、縁起を担いで、字を「芯」から「真」に換え、「真打ち」となったといわれるのが一般的です。でも、真打ちになったからといってゴールしたわけではありません。人によってはここからがスタートだという人もいます。とにかく落語家は、一生が修業で勉強していかなければならないのです。

真打ち
Copyright © 2007 公益社団法人落語芸術協会 All Rights Reserved.
当ホームページの文章、写真、イラストなどの著作権は、公益社団法人落語芸術協会に帰属します。無断転載はお断りいたします。