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楽屋裏話

  • ◆◆芸協浪漫6◆◆ ~社団法人落語芸術協会事務局長 田澤 祐一~

更新日2007年10月22日

今回は昭和60年3月の芸協事務局の上司、同僚、仕事等を書き込みたいと思います。当時の芸協事務局は、西新宿の柏木公園の近所にあり、新宿駅西口から徒歩10分強の場所。部屋は10坪ほどで小さいキッチンとトイレ付きのこじんまりとした間取りでした。入り口を入ると、すぐに左側にキッチンとトイレがあり、1メートル程度通路をとってロッカーと収納棚で仕切り、それを背に机が2脚ならんでいて、斜め右奥に2脚と、合計4脚でした。
手前の並んでいる2脚の奥が先輩の女性K野さん、隣が私、右奥の手前が荻原局長、並んでいる奥が会長のデスク(滅多においでにならないので空席)。当時は私を含め3人。事務局に入る前に、春風亭柳昇副会長にお会いしたことは前回に書きましたが、その折の別れ際にくれぐれも先輩のK野さんとは変なことにならないようにきつく言われた。
柳昇副会長「事務局にはK野さんという女性がいるんだが、若いし可愛い人だから事務所で荻原さんが出かけて二人きりになっても、、絶対にちょっかいを出さないように!!もし、何かあったら処分するからね!これだけは守るように、、、!いいね!、、、判ったね!、、心配だ!」
(何だかな~!まだ会ってもいない内から心配だなんて。まるで落語の小言幸兵衛だよこれじゃ~。。トホホ、、信用ないな~。でももし迫られたらどうしよう?くびになっちゃうのかな?早く会ってみたいな~!なんかドキドキする。)・・・・こんな事を思いながら3月4日の月曜日に初めて事務所でお会いした。
K野さん「はじめまして、K野です。これからよろしく!」
私 「よろしくお願いします。」
じろじろ見る訳にもいかないのでさりげなく観察する。
どう見ても普通の方だし、どちらかといえば清楚なおとなしそうな感じで、別に間違いが起きるとは思えない・・・。
2週間くらい経った頃だろうか?この頃の私は寄席の楽屋にいる事が多かったのですが、その日は荻原さんが寄席に出かけていて初めて事務所でK野さんと私の二人だけになった。

私「K野さん、何か手伝う事ありますか?今暇なので、」
K野さん「そうね~。今は別段無いな~。それより楽屋はどう?なれた?」
私「楽屋にはいろんな方がいらっしゃいますね~。亭治さんとか南楽さんとか・・」
K野さん「亭治さんはいたずら好き。。南楽ちゃんは良い子だからすぐに仲良くなるわよ。」
私「そうでしょうか。?なんだか馬鹿にされているようで。。」
なにやら机の上の本立てから分厚いカバー付きの本を出し、落ち着き払っておっとりと。
K野さん「どこだったかな~。何ページだったかな~。え~と・・・」
私「・・・・・・・・・・・・?」
K野さん「あっ!あったあった。ここにね!こう書いてあるの。」

「汝、人から受けた屈辱は・・・・・・」

長い文章を読んでいる。訳がわからない。。!

K野さん「あと、キリストはこうも言っているのよ。、、だから腹を立てちゃ駄目で。。判る!?」
私「・・・難しいですね。」(汗)
K野さん「難しくないのよ。ほらここにもこのように・・ 汝 ・・・」
私「K野さん、、、。K野さんはもしかしてキリスト教徒ですか?」
K野さん「・・・。少し違うわね。私はエ○バを信仰してるの!」
私「・・・・・・・」
この後もしばらく聖書の話をみっちりと聞かされてへとへとに!誰か。。。

その時、扉が開いて荻原局長が帰ってきた。(荻原さん、後光がさしてます。南無阿弥陀仏、、ありがたや。

目で感謝している私を見て、
荻原「ん?何かあったの?副会長から出来るだけ事務所で二人っきりにするなと言われているから、早く帰って来たんだけど、、何か?」
K野さん「冗談はよして下さいよ。副会長はいつもそんなことばかり言って困ります。」
荻原さん「いやいや、結構真面目に言っているんだよ。K野さんお気に入りだから。。わははっ」
私「・・・・・」

そんな中、分厚い本はいつの間にか元の本立てに、、やめようかな芸協!

それからは二人で事務所に居る時は、何か質問をしようものなら必ず分厚い本が出てきて・・・・。 「汝、、」そんな状態。
ある時、意を決して、

私「あの~、代々我が家は仏教徒なので、、キリスト教は判らないんです。」
K野さん「あのね、もう少しでハルマゲ、、が来て人類は絶滅するのよ!世紀末には必ず、、、、」
私「・・・・・・絶滅?」
K野さん「そう!でも私たちの信仰を信じる人だけは助かるの!」
私「・・・・」
K野さん「どうするの?!。助かりたいでしょ?!」
私「!!!!」「でも、、助かる人はほんの一部の人間なんでしょう?」
K野さん「そう!だから信仰しなさい!助かるから!」
私「私のこと心配していただいてありがとうございます。ただ私は寂しがりやですので、知り合いもいない世界じゃ嫌です。私は皆と共に絶滅します!」
K野さん「・・・・・」

私はついに絶滅宣言をした。(何だかさっぱりした気分)
さすがに絶滅宣言以来、K野さんは何も言わなくなった!
K野さんは大変に真面目な仕事熱心な方で、その点は尊敬できるし信仰心が厚い分、とても優しい心を持った素敵な女性であったのも事実です。
芸協では1年位しかご一緒出来なかった。
今もきっとお元気で暮らしていらっしゃることでしょう。

次回は荻原局長倒れる編

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